土壁の強度試験調査

創建当時の資材を用いた文化財復元保存の必要性

地域生活文化は、地域の自然環境の中で人々が培ってきた生活の中に生まれるものである以上、その振興は自然環境、歴史文化の尊重なしにはあり得ない。従って、人々が地域の自然並びに歴史に親しむ環境を整備する必要がある。

また、地域生活文化は、住民の肉体的並びに精神的な健康の上に育まれるものであるので、その振興は地域住民の健康の増進なしには達成され得ない。人々の健康は、自然な環境に適合した健全な住宅・建築・集落・都市の中で保持されるので、住宅・建築・集落・都市を常に自然な環境に適合した健全なものとして維持する必要がある。

豊かさは自然環境を前提として社会・経済、歴史・文化、建築・都市環境などと密接な関係をもっており、しかも常に相対的・動的であり、次第に向上している実感が必要である。このためには自然環境を前提として社会・経済、歴史・文化、建築・都市環境の有機的な関係を維持すべく常に研究され、生活条件が次第に改良される環境の整備が必要である。

土壁強度試験調査の目的

旧岡崎邸の復元に際して、創建当時の土壁材を可能な限り活用し、伝統的左官技術による土壁施工と再現修復を行うため、既存材における土壁面強度試験調査を行った。

強度試験調査方法

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NPO市民文化ネットワーク鳥取では、旧岡崎邸で実際に土壁材として使用されている創建当時の施工土をサンプリングし、現代の建築工法で使用されているスタンダードな施工土との強度比較試験を行った。調査は、施工土の性状試験及び、各種物理試験(主に圧縮試験)により、創建当時の施工土の強度を定量化し、比較するものである。

強度試験調査結果と試験データ

本試験の結果、創建当時の施工土強度は現代の平均的な施工土と比較して遜色のない強度を持っていた可能性が確認された。また、当時の施工土は粒子が均一で微細であり、結果として左官作業効率も良好だったという結果も得られ、建築材としての良質度も確認された。これは、当時の施工材を使用した現代の復元工事において、安全性や信頼性、優位性の一端が示されたと考える。次のリンクページ(→ 土壁強度試験概要と結果)に本実験の実施概要と検証データ(主要データのみ一部抜粋)を掲載する。

今後の復元計画と展望

本試験結果を受け、旧岡崎邸復元に際し創建当時の施工材を用いた場合の建築強度は一定の信頼性が得られたと考えられる。今後の復元作業においては、旧岡崎邸の文化財的価値を鑑み、その維持と建築文化継承のため、当時の施工材を元に、より忠実な修復保存が望まれる。